FEATURE

世界から採取した断片

石川幸史インタビュー

2017年、「代官山フォトフェア」の若手写真家育成プロジェクト「Magnify Photo」でグランプリを受賞した写真家・石川幸史。身近にある自然物を多く写したシリーズ《This is not the end.》から16点を選び、さらに60点ほどを並べたブックを展示するJINS SHIBUYAでの個展がスタートした。カメラを構え、レンズを通して光を採取するという石川に、写真を撮ることについて聞いた。

「今回は、ここ10年ほど撮り続けている《This is not the end.》を展示しています。シリーズ自体はかなりの作品数があるのですが、そこからこの個展のために16点を選び、プリントしました。写っているのは、花火だったり、焚き火だったり、雪や水、樹木などの自然物が中心です。撮影した場所も時期もバラバラの写真が連関していく、そんな風に新しい流れを作ることができたらと思っています」

生活圏内で出会った対象を撮る。写真家が撮りたいものとは。

「河川敷の花火大会だったり、玄関から見上げた空だったり、生活する中で気になったものを光の状態で写しとって採取するのが自分の作品の作り方です。目の前に突然現れた不可思議な情景に驚くこともあれば、街を歩いていて塗料の痕跡を見つけて立ち止まることもある。知っているはずの場所で、異様なものや意外なものを見つけることはとても楽しいし、当たり前のものの意外な一面に出会うのも楽しい。その瞬間の“驚き”を写真の中に表したいんです」

「写真の時間には2種類あって、撮影されたその瞬間と、写されたものを見る人の時間がある。見る人は物の質感に流動性を感じることも、自分の中の記憶が揺り動かされることだってあると思います。写真は、撮られることだけでその意味合いが決まるわけではなく、見る人によっても、前後の連関によっても変化するもの。本来は全く違っているはずのものが、よく似た形として現れることもあるんですよね。だから心に引っかかる写真があったら、なぜそれが自分の目を捉えるのか、自分の中にある記憶や感覚との関連について考えてみるのも面白いし、人間の視覚の不思議や、騙されることも楽しんでもらいたいと思っています」

自然物を撮り続けることで見えてきた新しいテーマ。

「2011年の震災を経て、ふと気づいたら、自然物に目が向くようになっていきました。その上で過去の写真を見返してみると、アンテナに引っかかってきたものがいくつもあった。そこで自然物を対象に撮るという方向性が少しずつ見えてきました。とはいえまだまだ素材が少なかったので、そこから写真を撮りため積み重ねていくうちに、おぼろげながら新しいテーマが見えてきました」

「シリーズに冠した《This is not the end.》というタイトルが生まれたのは2013年だったかな。日本語では“これは終わりではない”となりますが、この《the end》という言葉にはいくつかの意味を込めています。写真は、現実に流れている時間に撮られながら、そこから切り離され、浮かび上がるような一瞬として存在するもの。それと同時に、その一枚が他と連続しながら再構築されることで、切り取られた一瞬でありながら、それだけで完結せず繋がっていくものにもなっていくんです。もうひとつ、自然の物質や現象って、人間の生命のサイクルとは別に続いていく、人とは違う時間の幅を持っているように感じているんです。《This is not the end.》というこのタイトルには、自然の中に流れる時間の幅も写しとりたいという願いも込めました」

「今回は、まずはじめに展示スペースを見て、写真を見る人の動きや流れもイメージしながら作品を選び、並びや配置を決めていきました。加えて60枚くらいの作品をブックに収め、展示スペースの最後に置いてあります。このブックというのは展示とはまた違って、ページをめくったり戻ったり、1ページにとどまったりしながら、見る人がリズムや流れを作ることができるもの。展示で目にした作品も違った印象を帯びて見えるかもしれません。このブックも、展示と一緒に楽しんでもらえたら嬉しいです」

石川幸史 写真家
1978年岐阜県生まれ。2005年東京綜合写真専門学校卒業。主な受賞歴にDaikanyama photo fair competition「Magnify Photo」 グランプリ(2017年)、Japan Photo Award クリストフ・ギイ賞(2017年)、Kawaba New-Nature Photo Award #3 グランプリ(2015年)、塩竈フォトフェスティバル ポートフォリオレビュー コダック賞(2014年)、Epson color imaging contest 佐藤卓賞(2009年)などがある。

取材・文=鳥澤 光
編集=大澤佑介(RCKT/Rocket Company*)

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