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Interview – KENTA NAKAMURA

TALKING ABOUT "MAGNIFY LIFE" - 日常に潜む違和感を独特に表現する新進気鋭フォトグラファー、中村健太。

ー フォトグラファー・中村健太は、2016年イタリア版VOGUE誌が選ぶベストフォト100や「PHOTO VOGUE」のフォトグラファーベスト30に選ばれ、2017年には個展を開催するなど、まさに飛ぶ鳥を落とす勢い。国内外から注目を集める彼のクリエイティブマインドを探る。

中村健太の写真を見ると、その写真が持つ意味を考えたくなる。何気ない日常を切り取った1枚1枚なのだが、一度見たら忘れられない強烈なインパクトがある。「日常を映し出すことが多いのですが、作品はコンセプトありきではなく、『こんなもの持ってみて』『3Dメガネかけてみて』といった具合に、思いつきで被写体に話しかけながら、色々と試します。写真に違和感が生まれたり、面白いと感じると、そこにフォーカスし、深堀りしていきます。『何で違和感を感じるんだ? 何が面白いんだ?』と自分に疑問を投げかけ、しばらく撮り続けながら、答えを見つけていきます」。彼はこだわり抜いたストーリー性や断固としたコンセプトを始めに築き上げ、写真で表現するのではなく、自ら時間をかけて答えを探しながら撮り続けていくうちに、鑑賞者の人に伝えたいことが明確になっていくという。日常を特別な瞬間に変え、作品に落とし込む彼は「写真を撮っていて、わっとテンションが上がる瞬間があります。それが僕の世界がいつもと違って見える瞬間です」と話す。

何かを表現したいと心に抱き続け、<写真>を見つけた。

彼がカメラを手に取ったのは12年前。すでにシステムエンジニアとして仕事をしている時だった。きっかけは彼が所属しているフォトスタジオ・LOBJET(ロブジェ)の社長だったという。「ある日、フォトグラファーでもある社長がフィルムの一眼レフをくれたんです。ファインダーを覗き、シャッターを切った瞬間に衝撃が走ったことを今でも覚えています。学生時代は、これといって将来の夢がなかった。ただ漠然と何かを表現したいとは思っていたのですが、どういった方法で何を表現したいのかがわからなかったんです。しかしカメラを持ち、これだったんだと気付きました」。彼の写真には、ユーモアや温かさ、そして様々なメッセージが表現されている。中でも、一際インパクトの強い作品が「Your story」だ。集合写真や結婚式、初盆、子供を抱いている女性など、色々なシーンで撮られた写真の被写体は皆3Dメガネをかけている。アイデア源について聞くと、「3Dメガネは写真や映像を立体的に見るためのものであり、かけている人は何か対象を見ていますよね。しかし写真は人から見られるもの。ベクトルが逆に働いているのですが、『写真を見ている人が、作品に写っている人から見られていたらどういう感覚だろう?』と思ったのがアイデアの起源です」と独特な視点を説明する。「結婚式の写真などは、セットアップの状態で撮っていますが、実際に前撮りで写真を撮らせてもらったお客様なんです。リアルを追求したいので、実際の友達同士やカップル、親子の自然な雰囲気を表現するよう心がけています。きれい過ぎたり整理され過ぎたりしてしまうと、完成した写真は無機質になってしまう。生々しい写真がもつ魅力を引き出したいと思っているのと同時に、鑑賞者が考える余地を写真に残すことを心がけています」。身近な現実の中に、ちょっとしたひねりを加え、面白さや深み、そしてノルタルジックな柔らかさを表現する彼は、優しく鑑賞者に何かを語りかけているようだ。

僕にとって写真は、コミュニケーションツール。

「僕の撮っている写真は、何かを伝えるというよりも一種のゲームのようなものだと思っています」と話す彼は、「人それぞれの理解で僕の写真に興味を持ってもらって、それをまた別の様々な人に伝えてもらいたい。写真はコミュニケーションツールの1つだと思うんです」と写真の概念を語る。「『Your story』でも、普段の日常の何気ないシーンだったり、結婚式といった人生の中で起こりうるいろいろなシチュエーションを撮ることにより、写真を通じて自分の体験を置き換えてもらえたらいいなという気持ちで撮っていました」。彼が写真を通じて伝えたいこととは、感情を生み、掻き立てること。「感じ方は人それぞれ。何かひっかかるとか、気になるとか、頭の中にモヤモヤを残せたら嬉しいですね」。人々の感情を刺激するために、彼は自らの感情を探り、アプローチ方法を見つける。「アイデアの源となるのは、見ることより聴くことが多いですね。移動の時などにはラジオをよく聴きます。伊集院光の番組や東京ポッド許可局など、ものの見方が面白いんです。僕が当たり前に思っているものを、視点を変えて投げかけてくれるので、ものの見方、捉え方にハッとさせられることが多いんです。僕もそんな写真を撮りたいなと思います。当たり前の概念を覆したい」。そして写真は国境や人種をも超え、時に彼の言う新たなコミュニケ−ションツールとしての役割を存分に発揮する。「英語が苦手なので言葉でのコミュニケーションは難しいのですが、写真を通して、共感してくれたり、リアクションをくれたりするのも面白いです。写真を見てくれた人は自分の記憶の話をしてくれるんですよ」。

メガネは生活に欠かせない体の一部のような存在。

「運動する時はコンタクトレンズを着用しますが、普段は常にメガネをかけています。朝起きてまずメガネをかけ、夜寝るときにメガネを外す」と、寝るとき以外はずっとメガネを愛用している中村。体の一部だと言い、現在愛用しているメガネについて語ってくれた。「10年以上使っているんですが、実はこれだけしか持っていなくて。気に入ると1つのものをずっと使うタイプなんです。今かけているこのメガネは一目惚れで選びました。フレームの感じや、明治の文豪っぽい雰囲気が好きだったんです。それに起床から就寝までずっとかけているので、かけた時の感触も大切だと思っています」。さらに中村は独特な視点でこう続ける。「メガネって変身できる要素でもあると思うんです。メガネをかけているのとかけていないのでは印象が全然違うし、メガネを変えてもそのスタイルによって印象がガラリと変わる。いつもと違うメガネをかけてみると、それだけで気分が変わったり、新鮮な気持ちになったりしますし。メガネには特有のパワーがありますね」

フォトグラファー・中村健太の「妄想メガネ」

ー 様々な表現分野で活躍するクリエイターが、こんなメガネがあったら面白いなと思うメガネを自由な発想で提案する「妄想メガネ」のコーナー。日本のクリエイティブシーンを牽引するフロントランナーが、奇想天外なメガネを妄想してくれました。

フォトグラファー・中村健太が提案する妄想メガネは、メガネを愛用している彼だからこそできる発想。メガネが目元から数ミリ浮いており、物事を記録できたり、プロジェクターのようにメガネから映像が飛び出す。「メガネをかけていて困ることが、汗や衝撃でメガネがずり落ちることなんですね。もし肌に触れず、浮いているメガネが存在するのなら、もうメガネの位置を直す必要がなくなるし、便利だなと思ったんです。それにビジュアル的にも近未来的なデザインで面白いなと。あと、現代の科学技術はどんどん進歩しているので、近未来的な要素も取り入れたかったんです。なので、記録できたりプロジェクターを写せる技術を搭載させました。打ち合わせやプレゼンの時にも役立つし、『ちょっとこれ見て!』ってメガネから映像を投影できたらとても面白いと思いません? 妄想を膨らませ、僕の理想のメガネを考えてみました。」

中村健太/1981年生まれのフォトグラファー。2016年イタリア版VOGUE誌が選ぶベストフォト100、「PHOTO VOGUE」のフォトグラファーベスト30に選出。中でも、3Dメガネを装着した被写体を撮り下ろした作品「Your story」は国内外で高く評価され、イギリスのカルチャー誌「DAZED&CONFUSED」や「It’s nice that」でも取り上げられる。今後の活躍が期待される若手フォトグラファーの一人。

http://kentanakamura.com
http://www.lobjet-photo.com
Instagram: @hanahanamegane17

写真=タカコノエル
取材・文=土井彩
編集=大澤佑介、宮城フランシス伸(RCKT/Rocket Company*)

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